“色を二次元的な仕上げではなく、三次元空間を形作る一番大事な要素として捉える。
色を空間の中の三次元的なレイヤーとして考え、このレイヤーを配置し、重ねることで空間そのものを構成していく。”
エマニュエル・ムホー
1995年、学生の頃初めて東京を訪れたとき街中に溢れる「色」に衝撃を受けた。ボリュームの異なる建物、そのスキマに切り取られた空、看板、電線など、街は様々な「レイヤー」で構成され、その中で溢れ出しそうな無数の色が幾重にも重なり合い、複雑な奥行きを作っていた。この衝撃から東京に移り住むことをその場で決意、フランス国家建築家免許取得後、翌1996年にボルドーを離れ東京で暮らし始めた。東京の「色」と「レイヤー」は私のデザインコンセプト「色切/shikiri」を確立させた。「色切/shikiri」とは色で空間を仕切る、色で空間をつくること。色を二次元的な仕上げとして用いるのではなく、三次元空間を形作る一番大切な要素として捉える考え方である。色を空間の中の三次元的なレイヤーとして考え、このレイヤーを配置し、重ねていくことで空間そのものを構成していく。
「色切/shikiri」は日本の伝統的な間仕切りから着想を得た「面」の構成から始まり、徐々に細く姿を変え、「線」 の構成へと展開している。色を与える「面」や「線」の形体追求は、小さなアート作品から建築まで異なるスケー ルの間を行ったり来たりと旅をするかのように続いている。 たとえば、建築とピロティの限界を表現したstick chair (2007) 。それを空間に発展させたのがsticks (2010) で、今後、建物の構造にすることが目標だ。rainbow mille-feuille(虹のミル・フィーユ)と題した巣鴨信用金庫志村支店 (2011) はmille-feuille (2013) として家具に姿を変え、巣鴨信用金庫常盤台支店 (2010) に配置し重ねた二次元モチーフは三次元モジュールeda (2010) へと発展させた。他にも、モデュールを組み連ねたアート作品toge (2011) を空間に展開させることで創り出したbloom bloom bloom (2012) 。そしてこのtogeもいつか建築にしたい。
事務所設立 10 周年を迎えた 2013 年、100 色で構成した空間 100 colors を発表した。「100 colors」では東京の色とレイヤーを初めて見たときの感動を色の圧倒的な存在感で表現している。第一弾となった東京での開催以来、 100 colors シリーズを世界各地で展開することにも力を注いでいる 。
色が溢れ出しそうな東京を初めて見た衝撃、感動は今でも私の心を躍らせる。私の中にはいつも「色切/shikiri」コンセプトが流れており、建築やアートといった形態にとらわれず、私の作品を通してたくさんの人々に色を見て、触れて、そして心で感じてほしいと願っている。
たくさんの 色が溢れ出す「色切/shikiri」空間を人々に体感してもらい、1 人でも多くの人に色を通してエモーションを感じてもらいたい。